会社でもプライベートでも受け渡しをする機会がある「寸志」ですが、どんな時に渡せば良いのか、受け取ったときはどうすれば良いのか、実はよくわからない方もいるのではないでしょうか。
寸志の意味
寸志の意味は、「寸(少しばかり)の「志(こころざし)」で、「心ばかりの贈り物」のことをへりくだった言い方です。
一般的に寸志は、お礼をする際などに、封筒に心ばかりのお金を入れ、封筒の表書きに「寸志」と書いて渡します。
お金の代わりに菓子折りなどの品物を渡すこともあります。「寸志」は謙譲表現ですが、目下の人が目上の人に使うのはマナー違反になるので注意しましょう。
寸志とは?
寸志とは、「心ばかりの贈り物」を意味する言葉で、労いや感謝の気持ちを表すために贈る少額の金銭や物品のことです。「寸志」という言葉の「寸」は少し、「志」が心遣いを意味します。ビジネスでは、上司から宴会を取り仕切った幹事に渡す金銭や、会社から従業員に支給する金銭などを指します。
寸志は、目上の人が目下の人に金銭や物品を渡す際に謙譲して使う言葉で、目上の人に対して使うのはマナー違反です。寸志ではない、ほかの言葉に言い換えましょう。
寸志を渡す場面
では、どのような場面で寸志を渡すのでしょうか?場面ごとにご紹介!
ビジネス・仕事で渡す
先ほど少しお伝えしたように、仕事で渡される場合は、勤務年数が短いなど条件を満たしていない社員や、アルバイト、パート社員に対し、ボーナスなどに代わって支給されます。
また、忘年会や新年会、歓送迎会など、仕事の延長線上にあるイベントで、上司が会費を多めに負担する時、幹事に「寸志」と書いた封筒にお金を入れて渡す場合もあります。
プライベートで渡す
プライベートで寸志を渡すこともあります。たとえば、引っ越しの際に荷物を運搬してくれた業者やスタッフにお礼として寸志を渡すケースがあります。
お金の代わりに飲み物や菓子箱を渡しても構いません。その他、結婚式やお葬式などで、業者や送迎してくれたバスや車の運転手、身の回りの世話をしてくれたスタッフへのお礼として寸志を渡すことがあります。
寸志の渡し方
寸志に使う封筒は、結婚祝いなどの豪華な水引が付いていないものにしましょう。
お礼の意味で使用する場合は熨斗や水引が薄く印刷されているものでも構いませんが、何も印刷されていないシンプルな封筒なら葬儀の際にも使用できます。
封筒の表書きに「寸志」と書き、その下に自分の名前(会社から渡す場合は会社名でも可)を書きます。
また、寸志を渡すタイミングにも決まりはありませんが、忘年会の幹事に渡す会費の場合は、会計担当が困るので先に渡したほうが良いでしょう。
なお、お酒に酔って紛失されても困るので、先に渡すのがベストです。引越し業者であれば、作業が終わったタイミングでお礼の言葉と一緒に渡すと良いでしょう。
寸志の相場
寸志として支払われる金額の相場は、企業や渡す相手、地方相場などもあるため、決まった金額はありません。
先ほどの引っ越し業者に渡す場合は1,000円から3,000円程度、携わった人数に合わせて渡すと良いでしょう。心ばかりの気持ちとして渡すお金(贈り物)のため、多すぎると相手が負担に感じて、またお返しをしてくる可能性もあります。
相手に余計な気を遣わせないためにも、高価な贈り物や高額なお金は避けましょう。
会社のイベントで上司が負担してくれる場合は万単位で払ってくれることもありますが、これも参加人数や上司の懐事情などにも左右されるので、金額は決まっていません。
あくまでも寸志は「気持ち」です。少ないと言って腹を立てたりせず、気持ちを受け取るようにしましょう。
『寸志』言い換え方
寸志の言い換え方は、以下の4つです。
- 松の葉
- 寸情
- 寸意
- 薄謝
いずれも、寸志と同様に「心ばかりの贈り物」を表します。
基本的に、目上の人から目下の人に対して使うものの、「松の葉」は目上または同格・同輩の人にも使用できます。
ただし、のし袋やのし紙の表書きとしては「寸志」を使用するのが、もっとも一般的です。
寸志に似ている表現とその違い
「寸志」には、似たような意味をもつ言葉がいくつかあります。それぞれの意味と、「寸志」との違い。
寸志と似た言葉との違い
ご厚志・ご芳志
ボーナス・賞与
謝礼金
心付け
ボーナス・賞与
ボーナスや賞与は、基本給とは別に支給される給与のことをいいます。
また、金額や支払う時期が決まっていて、ある程度まとまった金額になります。企業によっては、社員にボーナスを支給する時期に、条件を満たしていない社員に対して寸志として少額のお金を支給するところもあります。
ボーナスと寸志の大きな違いは、寸志は毎回支給されるものではない点と、支給されるタイミングが決まっていない点です。
ご厚志・ご芳志
ご厚志(ごこうし)やご芳志(ごほうし)は、寸志を受け取った側が使う言葉になります。「寸志」には「わずかばかりの」といった謙遜した意味が含まれているため、「寸志を頂いた」と表現するのは失礼にあたるため、「ご厚志を頂きました」「ご芳志を頂きました」などと表現します。また「厚志」より「芳志」のほうが、より丁寧でかしこまった表現になります。
謝礼金
「寸志」と「謝礼金」は、どちらも感謝の気持ちを表し、品物や金銭を相手に贈る際に使いますが、若干意味合いが異なります。
「寸志」は感謝の気持ちを表す言葉ではあるものの、「謝礼金」より謙遜した表現となります。また、労いの意味を込めて目上の人から目下の人へ渡すものです。
一方で、「謝礼金」は純粋に感謝の気持ちとして渡すもので、そこに立場の上下関係は発生しません。たとえば、専門家にインタビュー協力してもらったさい、お礼として金銭を支払うなども謝礼金に該当します。
心付け
心付け(こころづけ)は、主にプライベートで使用する言葉です。お世話になる人、あるいは、お世話になった人に感謝の気持ちを込めて渡す少額の金銭のこと。寸志のように「労う」という意味ではなく、あくまでも感謝の気持ちを伝えるものです。
心付けは、冠婚葬祭でお手伝いをしてくれた方や、旅館に宿泊した際の仲居さん、リフォームの工事業者、引越し業者、などに渡すのが一般的です。
寸志の受け渡し時の注意点
寸志を渡す場合と、受ける場合、それぞれの注意点。
寸志を渡す場合
「寸志」は目上の人が目下の人に渡す場合の言い方なので、引越し業者や冠婚葬祭に関わったスタッフに渡す場合は、「御礼」「薄謝」「心づけ」と書くようにしましょう。
また、その際、日本人は縁起の悪い言葉や数字を避ける習慣があるので、結婚式の場合は2で割れる数字や、「4(死)」「9(苦)」などの数字の金額は避け、3,000円、5,000円を包むようにしましょう。
また、お葬式に関わった業者やスタッフへの寸志に関しては、会社によっては規定で受け取りを禁止しているところもあるため、あらかじめスタッフに確認しましょう。
地域の風習や業者、立場によって対応が変わってくるため、それぞれのルールやマナーに合わせて用意すると良いでしょう。
会社の場合、寸志も、税金が差し引かれる対象となるため、取り扱いには注意しましょう。
寸志を受ける場合
基本的に、寸志には「心ばかりなので、気を遣わないでほしい」の意味もあるため、お返しをする必要はありません。
しかし、言葉でのお礼はしたほうが良いでしょう。
その際、「ご厚志をいただき、誠にありがとうございます。」「ご芳志を頂戴し、心より感謝申し上げます。」などの言い方をするようにしましょう。
また、忘年会などで上司から寸志を受け取った際、幹事が参加者に寸志を受け取ったことを発表する場合がありますが、金額を公表するのはマナー違反になります。
「◯◯さん(上司の名前)よりお心づけを頂戴しました。ありがとうございます!」
程度に留めておきましょう。
もし、受けた寸志に品物でお返しをする場合は、いただいた寸志の金額より少ない金額のものにしましょう。寸志より高額な品物にすると、寸志が劣って見えてしまいます。
渡さなくていいケース
寸志を渡さなくていいケースもあり、たとえば以下が当てはまります。
- 歓迎会の主役として招待された若手や役職がない従業員の場合
- 自身が主役だが、会社が宴会費用を負担する場合
一般的に、新人歓迎会の主役は寸志の必要がなく、宴会費用が会社負担なら寸志を受け取った側が困るため、渡す必要はありません。
いずれの場合も、どうしても気持ちを表したい場合は「御礼」として少額を包むか、菓子折りを手渡す程度に留めましょう。