日本人のおよそ70%が猫背または猫背予備軍といわれています。日本人の体型は、欧米人と比べると全体的に平たく、筋肉量も少なめと言われています。
日本人の線の細い骨格
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また、正座やお辞儀の文化なども日本人に猫背が多いことに少なからず影響を与えているといわれています。さらに見逃せないのが、猫背は見た目だけでなく、身体のトラブルにつながるということです。猫背とは、猫のように背骨が丸まっている姿勢のことを指します。
人の背骨は
もともと自然なS字カーブを描いていて、上から頸椎、胸椎、腰椎、仙椎に分かれています。そのうち、胸椎の背骨側が極端に丸まっているのが猫背の状態となります。鏡に映っている自分の姿を見た時、肩よりもあごが突き出ていたり、背中が丸まっていたら、猫背の状態といえます。
猫背の状態が進行してしまうと、
S字カーブがなくなり、背骨全体が丸まる状態で固定化されてしまいます。こうなると肩も内に巻くような形となってしまい、ひと目でバランスがくずれた姿勢であることがわかります。肩こりや腰痛といった不調の原因にもなります。
猫背姿勢のほうが楽になっている方は要注意
猫背姿勢の方は、自分の中で猫背が楽な姿勢になってしまっている方も少なくありません。
しかし、楽だと思える姿勢であっても、猫背姿勢によって肩こりや腰痛など、身体のさまざまな不調が引き起こされる場合があります。
猫背への適切な改善・予防法をおこなっていくためにも、まずは原因を知ることが大切です。
猫背になってしまう原因
●デスクワークやスマホ使用時の不良姿勢
デスクワークやスマホを使用している時間が長くなるほど、筋肉の疲労がたまり姿勢は悪くなってしまう傾向があります。
デスクワークやスマホ使用時には画面や作業時の手元が目線よりも下にある場合が多く、頭を前に出して背中が曲がった姿勢になりやすいといえます。
また、集中していると前かがみの姿勢になりやすいことも猫背姿勢になる原因の1つといえます。
こうした姿勢が長時間続くことで、猫背姿勢がクセになってしまいます。
●筋力の低下
私たちの身体は筋肉によって支えられているため、筋力が低下すると正しい姿勢を維持することが難しくなります。
とくにお腹の筋肉は姿勢を支える中心部分なので、運動不足や加齢によりお腹の筋力が低下すれば猫背姿勢になりやすいといえます。
●生活習慣のクセ
生活習慣の中で身体の使い方に偏りがあると、筋肉バランスが崩れ、猫背姿勢になりやすくなります。
足を組む、頬杖をつく、利き手でバッグを持つ、立つ時に片側に重心を置く、などが筋肉の使い方に偏りのある生活習慣のクセとして挙げられます。
猫背が引き起こす症状
●ストレートネック
頚椎(首の骨)は本来、緩やかなカーブを描います。
カーブすることで重たい頭を骨格で支え、首にかかる負荷を分散させています。
しかし、猫背姿勢の方には、ストレートネックと呼ばれる首のカーブが失われて真っすぐになってしまっている状態の方が多くみられます。
猫背姿勢では頭が前に出ている状態になり、首に大きな負荷がかかることでストレートネックが生じると考えられます。
ストレートネックになると、重たい頭を首周辺の筋肉で支える必要が出るため、首に痛みが生じやすくなります。
また、首にある神経を圧迫する場合もあり、頭痛やしびれの症状が出るケースもみられます。
●肩こりや腰痛
猫背姿勢によって、肩こりや腰痛などの慢性症状に悩まされる方は多くいらっしゃいます。
猫背姿勢は筋肉のバランスが悪い状態といえるため、腰や肩など部分的な負荷がかかりやすくなっていることがあります。
負荷が蓄積されると血行不良や筋肉疲労が起こり、痛みやこりが生じるようになります。
とくにデスクワークやスマホの操作など、同じ姿勢が長時間続くと筋肉が硬くなり、肩こりや腰痛を起こしやすくなります。
●頭痛
猫背姿勢は頭が前に出た状態のため、首や肩周辺の筋肉には大きな負荷がかかっているといえます。
負荷がかかることで首や肩まわりの筋肉が硬くなって血流が悪くなると、頭の筋肉も硬くなることがあります。
頭の筋肉が硬くなって血流不良を起こし、神経が刺激されることで頭痛を起こしやすくなると考えられます。
●冷えやむくみ
猫背姿勢は身体がゆがむ要因にもなりゆがみによって血管を圧迫し、血行不良を招くことがあります。
血行が悪くなると手や足など先端まで血液が循環しにくくなるため、冷えが起こりやすくなります。
また、リンパの流れも悪くなるため、むくみが生じやすくなります。
猫背姿勢を諦めずに改善しましょう
猫背姿勢を改善することで、肩こりや腰痛といった症状の緩和にもつながると考えられます。
しかし、背筋を伸ばそうと意識しても、仕事や家事に熱中していると猫背姿勢に戻ってしまうことも少なくありません。
根本改善のためにも、意識的な問題だけではなく、日常的におこなえる猫背姿勢の対処法や予防方法
猫背を解消に導くための対処法
●ストレッチ
猫背姿勢がクセになっていると、背中や肩など部分的に筋肉が緊張して硬くなってしまうことがあります。
その硬くなった筋肉をほぐすためにも、日常的にストレッチをおこなうようにしましょう。
猫背の方におすすめのストレッチは、背中から肩甲骨まわりの筋肉を伸ばすストレッチです。
仰向けに寝て丸めたタオルを背中に入れ、両手を真上に挙げながら深呼吸をします。
簡単なストレッチなので、1日1回を目安におこないましょう。
●筋力トレーニング
猫背姿勢の方はお腹と背中の筋力が低下し、背筋を上手く支えられていないケースが多くなっています。
そのため、トレーニングでお腹や背中の筋力を高めることで、猫背改善につながると考えられます。
とくにインナーマッスルを鍛えることで、正しい姿勢を維持しやすくなります。
お腹や背中を鍛えるトレーニングとともに、インナーマッスルを鍛えるための体幹トレーニングも合わせておこないましょう。
●正しい座り方
猫背姿勢の方は、正しい座り姿勢を維持できていないことが多いです。
自分では正しい姿勢だと考えていても、猫背になってしまっている可能性があります。
あごを引いて背筋を伸ばすだけではなく、椅子に深く腰をかけて膝の角度が90度になるように座りましょう。
●バランスよく筋肉を使う
筋肉バランスが悪くなると、猫背姿勢につながります。
足を組む、利き手でばかり荷物を持つなど、偏った筋肉の使い方になる習慣を改善するようにしましょう。
猫背の予防方法
●隙間時間の背伸び
仕事や家事など一日の中で隙間時間をみつけた時には、背伸びをしましょう。
猫背姿勢では胸郭や肺が圧迫されているため呼吸が浅くなり、呼吸をするための筋力が低下してしまう場合があります。
背伸びをすると呼吸が深くなりやすく、呼吸をするための筋力を高めることが期待できます。
また、深く息を吸うことでお腹にも力が入りやすくなり、体幹が鍛えられて正しい姿勢を維持しやすくなるでしょう。
●姿勢改善
日頃から正しい姿勢を保てるように意識をもつことが大切です。
正しい姿勢を確認するためには、まず壁に背中を付けて立ってみましょう。
後頭部や肩甲骨、お尻、かかとを壁につけて立った時に、腰の後ろに手のひらが入るくらいの姿勢が正しい姿勢の目安です。
●作業環境の改善
デスクワークでのパソコン使用やスマホの長時間使用の際は、猫背になりやすくなっています。
とくに画面が目線の下にあると、うつむいた姿勢になりやすく背中が丸くなることが原因で猫背になると考えられます。
パソコン画面が目線と同じようになるように机や椅子の高さを調整し、スマホをみる際にはスマホ画面を目線と同じ高さになるように持ち上げて操作するようにしましょう。
そうすることで、自然と猫背姿勢になることを防げます。
●日常的なストレッチや運動
猫背姿勢では腰や肩など部分的に負荷がかかり、筋肉が硬くなってしまうことが考えられます。
筋肉が硬くなると姿勢が固定されて、猫背姿勢が常態化しやすくなります。
日常的なストレッチによって筋肉や関節の柔軟性を高め、猫背姿勢が常態化することを予防しましょう。
また、ウォーキングやラジオ体操など適度な運動をおこなうことで筋力の向上が期待できるため、正しい姿勢を維持しやすくなります。