黒毛和種は、小型で成長するのに時間のかかった在来和牛に、大型で成長が早いなどの特徴をもつ外国の品種を交配して作出されました。現在は全国で飼育されている品種で、和牛の9割を占めるといわれています。
牛肉の起源
彼らの原種は体高およそ2メートルで、人の腕と同じぐらいの長さの角を持つ「オーロックス」という牛だったそうです。
聞いただけで身震いがしそうな外見から、当時は誰もが恐れる存在だったこの牛は、ある勇敢なイラン人の農家によって数千年前に家畜化され始めました。
そこから幾代にわたり受け継がれたオーロックスは世代ごとに少しずつ増え、ヨーロッパから西アジアに分布して進化し、飼いならされたものが家畜化したといわれています。
そして、現在、世界中で見られる「牛」という存在になりました。
日本に牛が伝えられたのは稲作伝来(5~6世紀)と同時期で、ユーラシア大陸からの移住民が稲作と共に牛を持ち込みました。
これを裏付けるかのように、弥生時代の遺跡からも牛の骨が発見されています。
牛肉食の歴史
石器時代の壁画に牛を描いたと思わしき物がありますし、牛を労働力として活用し、崇拝する文化は、地中海やアラビアなどに色濃く残っています。「幻の大陸」と呼ばれるアトランティスも、牝牛を崇拝する文化を持っていました。
アルファベットの「A」の文字は、財産としての牛の角を表した文字であったとも言われています。ただ、この動物を崇拝するばかりで食べていなかったのかと言えばそうではなく、3000年前には既に古代エジプトで牛を食用として扱う文化が始まっていたといいます。
当時の壁画には、牛を解体し、食べる様子が描かれた物があります。
恐らく、それ以前にも牛を生け贄として、あるいは珍味のたぐいとして食べる文化が発達していたのではないかと思われます。
牛肉食の歴史
それまでの肉食と言えば豚肉や羊肉、鶏肉などを指していましたがそれ以前も決して食べられてこなかった訳ではありません。
機械のない時代
その一方で、
雄牛を去勢
一般庶民の間に牛肉が浸透してくるのは、牛が主要な労働力の座を滑り落ちる産業革命(18世紀頃)の辺りを待たなければなりません。
日本の肉食の始まり
遺跡から出土した焼け石に付着しているコレステロールを分析した研究では、岩宿人たちが焼き肉をしていたことが実証されています。
そして縄文時代には土器が出現しました。このことは煮炊きが始まったことを物語っています。縄文時代の貝塚や遺跡からは動物の骨も数多く発掘されていて、その9割は鹿(ニホンジカ)、猪(ニホンイノシシ)の肉で、その他にクマ、キツネ、サル、ウサギ、タヌキ、ムササビ、カモシカ、クジラなど60種以上の哺乳動物が食べられていたものとされています。
調理法
この時代に最もよく食べたのは鹿と猪。秋から冬にかけて、脂がのった時期にたくさんとって食べていたようです。
縄文人
卑弥呼の時代(3世紀)
逆に言えば、普段は当然のように食べてたわけです。
西本豊弘により形質的特徴から大陸から導入された家畜としてのブタが混入していたことが指摘され、「弥生ブタ」と称されています。
弥生時代
哺育(ほいく)期
肉用牛は通常、母牛と一緒にいる状態で6カ月齢くらいまで飼われます。この時期を哺育期といいます。生まれてすぐの時期は、母牛のお乳だけで十分に生育しますが、3カ月齢くらいになるとお乳だけでは足りなくなり、別飼い飼料(離乳食のようなエサ)を給餌(きゅうじ)しなくてはいけなくなります。
肉用牛でも、乳用牛のように母牛から早い時期に離して、人工乳によって飼育することがあります。この場合、1頭ずつ分けて飼育することが多く、時間をかけて13週齢くらいから離乳させて、じょじょに群飼に移行していきます。
離乳期
肉用繁殖牛から生まれた子牛は通常6カ月くらいで離乳します。その後、しばらく母親から離されて飼育されます。そして9カ月齢くらいで市場でセリにかけて肥育農家に売られていきます。
肥育期
牛に肉をつけさせ、食用にするための過程を肥育といいます。
肥育方法はいくつも種類がありますが、短期間で多くの肉をつけさせる方法、時間をかけてゆっくり上質な肉をつけさせる方法など、農家が目的とする最終的な仕上げ方によってさまざまな肥育法が考えられています。
和牛では、約20カ月におよぶ長期間の肥育を行い、良質な肉を作るようにする方法がとられるようになってきました。
牛肉の旬
日本には四季があります。春夏秋冬でしっかりと季節があって、和食の世界には「走り」「旬」「名残」といった食品の時節に応じた変化を楽しめます。
もちろん牛肉も旬があるのです。
-
牛は寒さに強く暑さに弱い
-
夏は夏バテして食欲が落ちる事が多い。
-
夏は水分摂取量が多く、肉も多少水っぽくなる。
-
冬にかけて皮下脂肪が増えていく。
-
冬は寒いので脂肪が増えて身がしまって旨味が増える。
牛は22度以上になるとストレスを感じはじめると言われています。
夏にはかなり弱いみたいなのですが、高級和牛と呼ばれるような牛の場合は、大型扇風機を何台も回したり、スプリンクラーを設置したり、密飼いを避けたりといった様々な対策が取られているようです。
現在はそういった技術の発達によって、夏でもほとんど変わらない品質の牛肉が提供出来ている生産地が多いようです。
そして、お肉は実際には旬よりも他の要素のほうが味に影響する影響度は高いです。
牛肉の死後硬直
牛肉が屠殺場で屠殺されてから、消費者の口の中に入るには10日から14日位実はかかっています。
一般的には、鮮度が悪くなりそうな感覚があると思いますが、これは死後硬直が関係しています。
牛も魚も、死んだ後は死後硬直という硬直現象が起こります。呼んで字のごとく、肉は固くなっているのでこの硬直中のお肉は固くて美味しくないのです。
死後硬直をとくため、腐敗がおこらないように4度の貯蔵で10日ほど熟成させます。
この、熟成期間中に牛肉は美味しくなるのです。アミノ酸やイノシン酸といった旨味成分が出てくるので、お肉は美味しくなります。
熟成肉
最近は熟成肉ブームですね。肉を熟成させて食べることが流行っていますが、実は飲食店に納品されたり、スーパーに並んでいる時点で肉は既に熟成されています。
熟成させることでしっかり旨味が出てきますが、最近ではさっぱりとした赤身肉を熟成させてより甘みを出して柔らかさを出す手法が流行っていますね。
微かな違いかもしれませんが、皆さん少しでももっと美味しくしようという心意気が、旬の違いを語らせたり、熟成による技術の進化が促されているのかもしれませんね。