ポリフェノールと聞くと、なんとなく体にいいイメージはあるけれど、実際にどんな効果があって、毎日の食事にどうとり入れればいいのかはよくわからない……という方が多いのではないでしょうか。
ポリフェノールって何?
ポリフェノールとは、植物が紫外線から身を守るために自ら作り出す成分の総称で、強い抗酸化作用があります。種類や量の違いはありますが、基本的に土の下に根を張り、地上で育ち実を付けるほとんどの植物にはポリフェノールが含まれています。
花の色の素となる色素や渋味となる成分がポリフェノールの正体です。天然のポリフェノールはこれまでに7,000種類以上の分類が明らかになっています。
中でも研究が進んでいるのがフラボノイド類です。
緑茶などに多く含まれる「カテキン」もその一種で、他にも玉ねぎやブロッコリーに含まれる「ケルセチン」、大豆に含まれる「イソフラボン」、ブルーベリーなどベリー類に豊富に含まれる「アントシアニン」などがあります。フラボノイド類以外でも、コーヒーの「クロロゲン酸」、カレーの色素である「クルクミン」、カカオや赤ワイン、紅茶の「テアフラビン」など特定の種類は食品の機能性研究の対象にもなり、一般にも知られています。
ポリフェノールの歴史
ポリフェノールの存在が注目されるようになったのは、「フレンチパラドックス」に関する研究発表がきっかけです。
「フレンチパラドックス」とは、フランス人は肉、チーズ、バターなどの高カロリーな食生活を送っているにも関わらず、他の欧州諸国に比べて心臓病による死亡率が低いという矛盾(パラドックス)のことです。
1992年
この現象に注目したフランスの科学者セルジュ・ルノー博士は、フレンチパラドックスの要因が、フランス人が日常的に赤ワインを飲んでいることによるという考察を発表しました。この発表により、研究者の赤ワインに対する注目が高まり、世界中で赤ワインブームが起こりました。
赤ワインにはポリフェノールが豊富に含まれており、ポリフェノールが持つ抗酸化作用は心臓病をはじめとする循環器疾患の予防に効果を発揮すると考えられています。
ポリフェノールが体に与える影響とは?
ポリフェノールは、活性酸素による酸化から体を守る抗酸化作用が健康に役立つと考えられてきましたが、実は、食事やサプリメントからポリフェノールを摂取しても、体内で代謝され化学構造が変化してしまうため、抗酸化作用はほとんど失われてしまいます。
さらに最近分かってきたこととして
ポリフェノールの中には極めて吸収されにくいものもあります(アントシアニジン、プロシアニジン、テアフラビンなどで渋味が特徴)。吸収されにくいにもかかわらず、これらはメタボリックシンドロームや心血管疾患のリスク低減、抗炎症・抗アレルギー作用、骨粗鬆症予防、目の機能を調節する効果、抗老化、最近では脳の認知機能維持にも作用するといった有効性が科学的に証明されています。
なお、これらの作用は、ポリフェノールの種類によっても大きく違います。例えばベリー類に多く含まれるアントシアニンは目の機能を調節する作用があることが分かっていますので、目を酷使するときに摂取するなど、状況に応じて使い分けていくと良いでしょう。
最近の研究では
消化吸収の経路を経ずに、口内や消化管の知覚神経を介して脳に認識され、自律神経(交感神経)を刺激することによって循環・代謝に影響を与えるのではないかという可能性も示唆されています。
例えば
辛いものを食べると熱くなって汗が出るように、味の成分が知覚神経を通じて交感神経を興奮させることで反応が表れる仕組みが体には備わっています。
このように交感神経が一時的に興奮することで表れる生理的変化は、運動した時にも見られます。運動することで骨や筋肉に適度なストレスが加わり、そのストレス刺激が脳に伝わって、心拍数や血圧が上がるなど循環・代謝の変化が起こるのも同じメカニズムです。
ポリフェノールにも同様のメカニズムが働いており、これまで報告されてきた多彩な機能は自律神経調整作用によるものではないかと考えています。
ポリフェノールが摂れる食材は赤ワイン以外にも数多い
植物の成分であるポリフェノールは野菜・果物にも多いのですが、赤ワインなどにも多く含まれています。ブドウは種に多くのポリフェノールを含むので、ブドウジュースや白ワインよりも、実から種皮まで丸ごと使って醸造する赤ワインの方が、ポリフェノールの種類も量も多くなります。
緑茶も紅茶も同じお茶の木ですが
茶葉を発酵させる紅茶は、その過程でカテキンが結合してテアフラビンという形に変化します。
近年、特に注目されているのはプロシアニジンです。赤ワインをはじめ、カカオ(チョコレート)、黒豆の種皮、柿などに多く含まれ、内外で実施された大規模研究でもメタボリックシンドロームの危険因子の改善効果が認められるなど確かな科学的根拠が得られています。
摂取から短時間で脳血流が上昇
短期記憶が向上するという報告もあり、集中力アップや作業速度・正確性の向上に役立つと期待されています
基本的に植物性食品にはポリフェノールが含まれているので、普段の食事から知らず知らずのうちに摂取している可能性があります。
一つの食品に一つの成分だけではなく、複数のポリフェノールが含まれるので、ポリフェノールを効果的に摂るには「幅広くさまざまな食品を食べること」と考えるのが良いでしょう。
カテキンの効果
カテキンは緑茶・紅茶などに豊富なポリフェノールです。
緑茶の渋み成分「タンニン」という名称でも知られています。
殺菌作用
血糖値の上昇を防ぐ
脂質の吸収を抑える
ガン予防
肥満予防
口臭・虫歯予防
抗酸化作用や殺菌作用がよく知られています。
体内の活性酸素やウイルスの働きを抑制することで、免疫機能をアップさせる作用があります。
風邪やインフルエンザにかかりにくくなるほか、ガンの予防にも役立つと言われています。
また、カテキンには糖質や脂質の吸収をゆるやかにする作用もあります。
血糖値・コレステロール値のコントロールに役立つため、糖尿病や肥満などの生活習慣病の予防を期待できます。
アントシアニンの効果
アントシアニンは天然色素の1種です。
あざやかな青紫色をしているのが特徴です。
アントシアニンが豊富な食品にはブルーベリーやブドウ、カシスといったベリー類の他、紫イモやナスなどがあります。
抗酸化作用
視覚機能を正常に保つ
白内障・緑内障などの眼病を予防する
花粉症の予防
メタボリックシンドロームの予防
動脈硬化の予防
糖尿病の予防
アントシアニンの代表的な効果は、目の健康を保つことです。
視力の改善や、眼病の予防効果が知られています。
アントシアニンには網膜の再生を助ける作用があります。
目のピントを合わせたり、目がかすんだりするのを防ぐことで、視覚を鮮やかに保ちます。
また、眼球の酸化を防止する作用により、白内障や緑内障などの眼病の予防が期待できます。さらにアントシアニンの抗酸化作用は、全身や血管の酸化を防ぐ効果もあります。
動脈硬化や高血圧などの生活習慣病の予防に役立ちます。
クロロゲン酸類の効果
クロロゲン酸類はコーヒーポリフェノールとも呼ばれます。
その名の通り、コーヒーに豊富に含まれるポリフェノールです。
ごぼう・さつまいも・じゃがいもなどにも豊富に含まれます。
ダイエット効果
脂肪肝の予防
糖尿病の予防
クロロゲン酸の代表的な効果は、脂肪肝の予防です。
脂肪肝とは肝臓に中性脂肪が蓄積した状態です。
脂肪肝が進むとメタボリックシンドロームのほか、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病に発展しやすくなります。
クロロゲン酸には中性脂肪を燃焼する作用があります。
肝臓に蓄積した脂肪を燃焼させるため、脂肪肝の予防・改善につながります。
クロロゲン酸による脂肪の燃焼は、全身のダイエットにも役立ちます。
とくに運動前にクロロゲン酸を摂取すると、脂肪を効率的に燃焼できます。
さらにクロロゲン酸には、血糖値の上昇を防ぐことで糖尿病を予防する作用もあります。
血糖値が気になる方は、食後にブラックコーヒーを飲むのもおすすめです。
なお、コーヒーは、深煎りより浅煎りのほうがクロロゲン酸の量が多いと指摘されています。