そばつゆは、ざるそばをいただくときに欠かせないもののひとつ。
口の中でそばの風味と醤油の味わいがハーモニーを奏で、重層的なおいしさが広がります。
そばの魅力を何倍にもアップさせるそばつゆですが、そうめんなどに使われるめんつゆとの違いは何でしょうか?
そばつゆとめんつゆの違い
スーパーなどでも売られているそばつゆとめんつゆは、同じような茶色でそれほど違いがないように思いがち。
原材料は似ているものの、味わいが異なるのがそばつゆとめんつゆです。
たくさんの種類がある麺つゆ、何が違う?
麺つゆとは、ご存知の通り麺料理全般の他、あらゆる料理の味付けに使える調味料です。後述しますが、そばつゆやそうめんつゆがストレートで使えるのに対し、麺つゆは使用する料理に合わせて2倍~4倍程度に薄めて使う濃縮タイプがほとんど。味の濃さを自分で調整できるのが濃縮タイプの麺つゆの特徴で、その倍率は各製品によって異なります。
スーパーに行くと麺つゆコーナーにはたくさんの麺つゆが並んでいますが、何を基準に買えば良いのか悩んだ経験はありませんか。これについては濃縮倍率の他、麺つゆの甘さも1つの選択基準にすると良いでしょう。
甘さの加減をどうやって判断するかというと、見てほしいのが原材料名の欄。実は、原材料は使用量の多い順に記載されています。麺つゆの材料には「砂糖」など糖系のものが入っており、それが前の方に書いてあれば、そのあとに書いてある他の材料よりも糖が多めに入っているということになります。
原料の違い
原材料はどちらも、醤油・みりん・砂糖・出汁の4種類がメインの原材料であることが一般的です。
原料に大きな違いはありません。
しかし、作る際の分量が異なり、そばつゆは出汁が少なめで醤油が多めであることが多く、めんつゆは逆に出汁が多いのが特徴です。
市販のめんつゆとそばつゆの原料を比較
めんつゆや出汁で人気のヤマキでは、「めんつゆ」と「そばつゆ」をそれぞれ展開しています。
■めんつゆ500ml(2倍濃縮)
しょうゆ(小麦・大豆を含む、国内製造)、ぶどう糖果糖液糖、食塩、砂糖、かつおぶしエキス、ふし(かつお、そうだかつお)、たん白加水分解物、醸造酢、魚介エキス、酵母エキス、デキストリン / 調味料(アミノ酸等)、アルコール
■ストレートそばつゆ500ml
しょうゆ(小麦・大豆を含む、国内製造)、砂糖、食塩、かつおぶしエキス、かつおぶし(国内製造)、そうだかつおぶし(国内製造)、醸造酢、酵母エキス、デキストリン / 調味料(アミノ酸等)
醤油や食塩、砂糖のほかに「ふし」やかつおぶしといった出汁が入っていることも共通していますが、そばつゆはめんつゆに比べて砂糖や食塩の表記が前のほうであることが分かります。
また、2倍濃縮のめんつゆとストレートのそばつゆでは、ストレートのそばつゆのほうが原材料がシンプルな印象です。
添加物であるアルコールが含まれていないのも大きな違いではないでしょうか。
味の違い
めんつゆは、出汁が多いため甘みや塩分も控えめですが、そばつゆは全体的に味が濃いめです。
そばの力強い風味に負けないよう、そばつゆは醤油の味わいがしっかり利いているのが特徴です。
そばつゆだけを舐めると、少し辛いと感じるほど濃いめの味わいとなっています。
一方、めんつゆは醤油よりもかつお出汁の風味が利いており、奥行きのある味わいが特徴です。
うどんやそうめんなど小麦粉で作られる麺はあっさりとした淡白な味わいなので、出汁の香るつゆがよく合います。
めんつゆ自体を舐めてみても、塩辛さより出汁のまろやかな風味が堪能できます。
使い方の違い
そばつゆはそば専用のつゆ、めんつゆはそば以外の麺類用のつゆです。
めんつゆはそば以外の麺類でも使えることから、めんつゆを常備している家庭も多く、市販でもめんつゆのほうが商品の種類は多いでしょう。
本格的なめんつゆを作る場合は、醤油・みりん・砂糖で作った「かえし」とかつおぶしなどで取った「だし」を混ぜて作るため、2つの割合を変えることでめんつゆにもそばつゆにも変化させることができます。
それぞれに違いがある両者ですが、どちらも料理の味付けにも使うことのできる万能調味料です。
保存方法の違い
めんつゆもそばつゆも、市販のものであれば開封後は冷蔵庫で保存し、できるだけ早く使い切りましょう。
特にストレートのつゆは、濃縮タイプよりも傷みが早いため気をつける必要があります。
また、醤油やみりんなどの調味料と比べてめんつゆやそばつゆはアミノ酸が豊富であり、塩分・糖分・アルコール分の少ない調味料であるため、ほかの調味料と比較しても賞味期限が短いといった特徴があります。
ついつい賞味期限を切らしてしまいがちですが、おいしく味わうためにも開封後は早めに使い切るようにしましょう。
先述したように、めんつゆやそばつゆは万能調味料のため、さまざまな料理に使えます。
もし、開封してから時間が経ってしまいそうなときは料理に使ってみてください。
価格の違いは何が理由?
同じ企業が製造販売する麺つゆでも、商品や価格のパターンが複数あることも。価格の違いは、材料の品質に理由があります。例えば、良い材料を使ってだしを濃く出しているものは価格が高くなります。
江戸時代のそばつゆは現代とはひと味違っていた?
江戸時代に団子状のそばがきから麺状のそば切りへと発展し、世間に広く浸透していったそば。
当時からそばつゆも用いられていましたが、どうやら現代とは違った味わいのそばつゆだったようです。
江戸時代初期に書かれたといわれる『料理物語』という書籍では、そばつゆはなんと味噌と水から作られる「垂れ味噌」もしくは「煮貫」に薬味を加えたものである、と残されています。
「垂れ味噌」とは味噌に水を加えて煮詰め、布袋に入れてこしたもので、「煮貫」とは「垂れ味噌」に削った鰹節を加えて煮詰め、こしたものを指します。
薬味には花がつお、大根おろし、あさつきを加え、ここに辛しやわさびを入れるのも良いと書かれているようです。
『料理物語』から100年以上を経て書かれたとされる『蕎麦全書』では、さらにそばつゆが変化した様子が分かります。
味噌ベースと醤油ベースの2通りがあり、味噌ベースは垂れ味噌に酒と削り節を加えて煮詰め、こした後に塩とたまり醤油で味を調えたもの、醤油ベースは醤油と酒、水を合わせて弱火にかけたものです。
なお、醤油ベースにかつお出汁を加えても良いと書かれているようです。
その後どのようないきさつで醤油ベースのそばつゆが普及したかは定かではありませんが、そばつゆにはなんとも興味深い歴史があります。