ダイコン(大根)はアブラナ科ダイコン属の1年草で、古くから日本人になじみの深い野菜の一つですね。春の七草の『すずしろ』と言うものがありますが、これは大根のことです。
ダイコンには沢山の種類があり、大きさや形も様々です。日本では白い物が一般的で、それに紅いラディッシュが良く知られている位ですが、海外では真っ黒い物や表面だけでなく芯まで紅い物もあります。最近になって日本でも色々なカラフルな大根を作る農家も各地で出てきているようです。また、ダイコンのスプラウトは「カイワレダイコン」として知られています。一方、春にとう立ちした花の後に出来る若い鞘は「さや大根」として食べる事も出来ます。
消化酵素がたっぷり部位による使い分けを
古くから日本人に親しまれてきたため、全国各地には、辛みや形、大きさの異なる個性的なご当地ダイコンがあります。今も日本で最も生産されている野菜で、主に流通しているのは甘みがあり、みずみずしい青首ダイコンです。
葉に近い部分ほど甘く、先に近い部分ほど辛味が強くなるので、先端は薬味や漬物に。葉に近い部分は、辛味が少ないのでサラダなど生食に最適です。中央部分は、おでんやふろふきダイコンなど煮物に向いています。
また、葉も栄養に富んでいます。細かく刻んでごま油で炒め、かつお節とだし醤油で味を調えると、食べるとくせになる一品となりオススメです。
近年では、赤紫色や黒、緑色など、海外の品種も加わり、直売所では様々なダイコンを見かけるようになりました。
ダイコンの栄養
根には消化を促進する複数の消化酵素が含まれています。そのひとつ、ジアスターゼは胃腸の動きを活発にし、胃もたれや二日酔いを防ぐ効果があります。
特有の辛み成分にも胃液の分泌を促進する働きがあり、焼き魚や天ぷらにダイコンおろしを添えるのは理に適った食べ方と言えます。
葉は、カロテンやビタミン・ミネラルを豊富に含む、緑黄色野菜です。
ダイコンの保存方法
葉から水分が蒸発してしまうので、必ず根と葉を切り離しましょう。根は新聞紙やラップに包んで野菜室に立てて保存。葉はすぐに食べるか、下茹でして冷蔵か冷凍保存します。
ダイコンの選び方
大根の品種
大根は主に肥大した根が食用とされますが、大根の葉が食用とされる葉大根と呼ばれる品種もあります。また、かいわれ大根は大根の芽を15cm弱まで伸ばしたもので、品種ではありません。以下はよく知られている品種です。
・青首(あおくび)大根
青首大根は愛知県春日井群宮重の青首宮重(あおくびみやしげ)を中心に育成されました。首の部分が緑色なので「青首」と呼ばれています。別名で宮重大根とも呼ばれています。
青首大根は季節を問わずに収穫できるよう改良された品種で、全国で最も多く栽培されています。青首大根は1970年代頃から主流になり、店頭に出回っている大根のほとんどを占めています。
青首大根は円筒形で根の太さが均一で長細く、重さが1~2kg程あります。辛みが少なく甘みが強いことが特徴で、水分が多いためおでんやふろふき大根、サラダ、漬けもの、切干大根などに幅広く活用されています。一年中出回っていますが、最も美味しい時期は冬だといわれています。
・亀戸(かめいど)大根
亀戸大根は種をまいてから40日程で育ち、春に出荷されている品種です。長さが30cm程度の小さい短根大根です。
亀戸大根は伝統野菜の一つで江戸時代~大正時代まで東京の江東区亀戸で栽培されていましたが、近年は生産が激減しています。現在は葛飾区でごく少量生産されています。
きめ細やかな乳白色をしており、少し辛みがある味が特徴です。亀戸大根は浅漬けや糠味噌にすると美味といわれています。
・みの早生(わせ)大根
みの早生大根は白大根とも呼ばれていますが、現在はほとんど出回っていません。根の長さが40cm前後で先が細くなっていることが特徴です。暑さに強いため栽培しやすく、多汁で辛みのある夏の大根の代表品種です。
・三浦(みうら)大根
三浦大根は明治時代~昭和初期に人気のあった練馬大根を改良した大根です。神奈川県三浦半島で栽培されたことから三浦大根と呼ばれるようになりました。三浦大根は長さ50~60cm程度の中央部がやや太めの大型で、首の部分まで白色をしています。大きいものは4kgにもなるといわれています。
三浦大根はたっぷりの水分を含み、甘みとやや強い辛みを持ちます。煮物やたくあんなどの漬けもの、大根おろしなどに適しているといわれています。
・守口(もりぐち)大根
守口大根の原産地は大阪府守口市ですが、現在は名古屋や岐阜の名産とされています。世界最長の大根といわれており、標準とされる大きさでも太さ2.5cm、長さ120cmにもなります。さらに長いものでは長さが150cmを超えるものもあり、日本一細長い大根として知られています。
・桜島(さくらじま)大根
桜島大根は鹿児島県桜島の火山灰土で育つ世界最大の大根で、約200年もの歴史があるといわれています。かぶのような丸い形をしており、太さ40cm、重さ15~20kg以上にもなる冬の大根のひとつです。甘みが強く肉質が緻密なため味がしみ込みやすく、煮崩れしにくい特徴を持つことから、煮物に適しているといわれています。
大根おろしや漬けもの、切り干し大根などにも向いています。1~2月に旬を迎えます。
・親田(おやだ)辛み大根
親田辛み大根は長野県下伊那郡下條村の特産品です。太さ6cm前後で辛みの中にある甘みが特徴で、おろしそば用の大根として200年前から使用されています。主におろしてそばや焼き魚の薬味として使用されます。
・ムラサキ大根
ムラサキ大根は青首大根より小ぶりで辛みがある大根です。煮くずれしにくく、酢をかけるとほんのりとピンク色を呈します。
・聖護院(しょうごいん)大根
ラディッシュは20日程度で収穫が可能なことから二十日大根とも呼ばれています。ヨーロッパ大根の中で、唯一国内でも栽培されている品種です。
皮が赤く中身が白いことが特徴で、重さ10~15g、直径2cm程度の小型で丸い大根です。表面は鮮やかな赤色をしているため、サラダなどの彩りに使われたり、甘酢づけなどに使用されています。
大根の効果
また、辛み成分であるイソチオシアネートも胃液の分泌を促し、胃の健康を保ちます。さらに豊富に含まれている食物繊維が腸内の老廃物を体外に出す役割を果たしてくれています。
大根に含まれているビタミンCには免疫力を高める効果があります。免疫力とは細菌やウイルスなどから身を守る能力のことです。ビタミンCは体内に入ってきた細菌やウイルスなどを攻撃する白血球の働きを助けるとともに、自らも細菌やウイルスと闘い体内への侵入を防ぎます。
また、大根の葉にはビタミンAが含まれており、皮膚や粘膜を丈夫にする働きをします。ウイルスから体を守ってくれる大切な役割を果たしている皮膚や粘膜が丈夫になると、体の免疫力が高まります。
大根に含まれるビタミンCとビタミンAの相乗効果によって免疫力が高まり、風邪を引きにくく回復力の高い丈夫な体をつくることができます。
大根には美肌ビタミンと呼ばれているビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCはコラーゲンの生成に欠かせない成分です。コラーゲンは動物の細胞や組織をつなぎ合わせる接着剤の役割を果たしているたんぱく質の一種で、体内のたんぱく質の30~40%を占めており、体の形成や機能の正常化に不可欠の成分です。コラーゲンが不足すると、肌の水分量が減り老化が進みます。
ビタミンCにはシミの原因となるメラニン色素の生成を防ぐ働きもあるため、若々しい肌を保つ効果があります。