カロテン豊富な初夏の旬果実
種なし品種も登場
初夏の訪れを告げる果実です。日本にも自生していたとされますが、江戸時代、中国から伝わった品種をもとに栽培が本格化しました。当時は、食中毒の予防にと、ビワの葉を煎じたものを売る「枇杷葉湯売り」が夏の風物詩だったほど、広く漢方薬や民間療法として役立てられてきました。
種が大きく食べる部分が少ないと思われがちですが、実は食べられる部分の割合はバナナとほぼ同じで70%近くが可食部です。さらに近年では、大玉で甘みの強い品種や、種なしの品種も開発されています。
皮をむくときは、軸の方をもち、お尻からむくと、キレイにむけます。
ビワの特徴
まずはビワ(枇杷)とはどのような果物なのかについてご説明します。元々中国南西部で栽培されていたものが日本に渡来してきました。現在は日本では四国や九州など暖かい地方で自生しており、果樹園にて栽培されています。
樹の高さは10mくらいあり、葉は一枚一枚大きめで、濃い緑色で、表面に産毛があります。葉に隠されているように楽器の琵琶に似た形の橙色の果実が実っています。日本でビワは枇杷と書き、中国でも同じ漢字が使われます。
日本にビワが持ち込まれたのは古代とされており、ビワは日本以外にインドなどにも広まりました。琵琶を使った療法も生まれたほど、ビワは浸透しています。
中国からハワイに行った移民がハワイにビワを持ち込み、日本からはイスラエルやブラジルなどにも広がりました。他にも栽培されている場所は多く、ギリシャやトルコ、アフリカ北部、イタリア南部など様々な場所で栽培されています。
来 歴
びわの原産地は中国と日本南部。中国では古くから食用とされ、日本でも各地に小さなものが自生し、食べられてきたと考えられています。ただし、日本で自生していたものは小粒で商品価値が低く、当時は自家栽培のみでした。
また、古くは日本には「びわを作ると早死にする」という迷信があり、それほど栽培が盛んにならなかったという背景があります。これは、当時びわが病人のいる家で薬代わりに栽培されることが多かったために逆に起こった迷信で、びわに含まれる成分がいかに薬効性の高いものであるかの裏返しでもあります。
日本での栽培が盛んになったのは江戸時代からで、天保年間(1830年代)に中国から大きなびわが長崎に導入されたのがきっかけです。 現在、日本・中国・北部インドを中心に作られていますが、18世紀にヨーロッパに伝えられ、地中海沿岸でも栽培されています。
「びわ」の名は、楽器の琵琶に形が似ていることからつけられたというのが一般的ですが、中国語の発音を真似た「ヒワ」からきたという説もあります。
(ちなみに楽器の琵琶も、もともとは「枇杷」と書いたそうですが、琴の一種ということで「琵琶」になったそうです。)
品 種
●茂木
(もぎ ハウスもの2月~ 露地もの5月下旬~6月上旬)
日本で現在栽培されているびわの主力品種。
江戸時代の天保年間に中国から長崎に伝えられた唐ビワの実生から育成され、長崎県の茂木という地で主に栽培されたため、この名がつきました。
形は楕円形で果皮も果肉も橙黄色をしています。果重は平均40g。果皮はむきやすく、甘味は強く多汁で酸味はすくない品種です。
●田中
(たなか 6月上旬~6月下旬)
明治12年(1879年)に田中芳男博士が長崎から種を持ち帰り、東京で育成させた品種。 形は丸みがあり、茂木よりも大粒なのが特徴です。果重の平均は60g。果皮も果肉も橙黄色ですが、茂木に比べていくぶん薄い色をしています。 千葉県で栽培が盛んな品種です。
●長崎早生
(ながさきわせ 2月~4月)
長崎県果樹試験場で、本田早生と茂木とを交配させて誕生した品種。昭和49年に、誕生した県名にちなみ、長崎早生と命名されました。
形は茂木に似ていますが、果重は40~50gで茂木よりやや大きいのが特徴。果皮は橙黄色で、茂木よりやや赤みがあります。果肉も橙黄色で非常にやわらかく、早生種としては多汁で甘味も強い品種です。 ハウス栽培に対する適応に優れています。
●種無しびわ!?
千葉県の試験場では種無しびわの開発に成功したそうで、数年後には商品化されそうです。「種が大きくて食べにくい」というのがびわの難点だっただけに、種無しびわが出回れば大変な人気を呼ぶかもしれません。
ビワの栄養
カロテンが豊富に含まれているため、高血圧や脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病予防や、ガン予防の効果が期待できます。ポリフェノールの一種クロロゲン酸にもガン予防の効果があるとされています。
ビワの葉には、タンニンやビタミン様(よう)物質が含まれており、昔から薬として利用されています。
ビワの選び方
果実にうぶ毛があり、軸がしっかりしているもの。果皮に傷がなく、透き通ったような鮮やかなオレンジ色のものを選ぶとよいでしょう。