メニューに載っていないし、頼んだ覚えもないけれど、なんだかオシャレで美味しそうなものが運ばれてきた経験、ありませんか?!
- アミューズとは(amuse)
- アミューズはひとつとは限らない?!
- アミューズは日本生まれ?!
- ポエム的な日本語
- アミューズとは無料で提供されるもの
- アミューズ料理の特徴
- 様々なスタイル
- きっかけ作りと食欲を増す効果
- タイミングを作るための必須アイテム
- 提供の仕方にセンスが問われる
アミューズとは(amuse)
お店によってはアミューズブーシュ(amuse bouche)「ひとくちのお楽しみ」と表記しているところもあります。(boucheブーシュは口、という意味のフランス語)つまり、「口を楽しませるもの」です。別の言い方でアミューズグール(amuse gueule)という言い方も存在していて、こちらも同じ意味。グールは動物の口、という意味なので、ちょっと面白おかしくフランスならではのシニカルな表現ということになりますね。
どちらが間違っているとかではなくて、フランス料理の世界では両方使われています。
アミューズはお店からのサービスとなっているため、受け取ったからといって追加料金は発生しないことが多いのも特徴です。
アミューズはひとつとは限らない?!
さらに、アミューズの前にアヴァン・アミューズ(avant amuse)というものが登場することもあります。
本格的なフルコースの場合、前菜の前にアヴァンアミューズ、アミューズブーシュと2皿も登場することがあり、食べる側の気持ちを高揚させてくれます。
いわば「お店からのおもてなし」のひとつで、メニューやワインをゆっくり選んで欲しいという気持ちのサービスです。このアミューズ、シェフのセンスの見せどころでもあります。これから始まる楽しい食事の最初に出すものですから、アミューズが残念だと後の食事が抜群に美味しいということはなかなか考えにくいのです。アミューズを頑張っているレストランはお客様を楽しませてあげよう!!という気持ちが強いシェフがいると思って間違いないでしょう。
アミューズは日本生まれ?!
ここまで書いて、「日本で言うところのつきだしね」と思われた方も多いと思うのですが、まさにその通りです。フランス料理の世界にアミューズが定着しだしたのは、1970年頃に「ヌーベルキュイジーヌ」という動きが起こりだしてからのこと。(ヌーベルキュイジーヌ=新しい料理)その頃、フランスのシェフたちが影響を受けたのが和食の「先附」でした。
それから有名シェフによって、軽やかで華やか、繊細で大胆、他の料理人の創作意欲を刺激する美しいアミューズが次々に生まれていきます。
口だけでなく、目で見ても楽しめる内容のものが多いのが特徴です。
ポエム的な日本語
フレンチレストランの日本語メニュー表記としては、「アミューズ」と書かれているのがスタンダードです。「はじまりの一品」「シェフからのプレゼント」などと、フランス語とはかけ離れた日本語表記は婚礼メニューによく見られます。子供からお年寄りまで出席する結婚式の料理は誰でも理解できることが大切で、詩的な表記はそんな配慮が感じられます。また「突き出し」と日本料理のように書いている店は潔く、とても分かりやすいですね。
アラカルトのリストには記載されてはなく、ただ口頭で初めてアミューズの存在が確認されます。コースメニューには、一番上に記載されていても、その内容は同じく口頭のみ、もしくは選んだ料理内容、アレルギー、苦手な食材を確認してから、厨房で料理長の指示によって内容を決めて提供されます。
アミューズとは無料で提供されるもの
ところで、時々遭遇することがあるのですが居酒屋などで「あ、突出しいらないので…」と断る人がいます。フランス料理の場合、いくら同じ位置づけである「突出し」だと言っても、シェフの才能や創意工夫を垣間見ることのできるチャンスなので、そのような行動に出てしまうのは無粋なことだと思います。ちなみに、アミューズを断ったからと言って値段が安くなることはありません。アミューズとは無料で提供されるものなのです。
思い切り、口を楽しませましょう。
アミューズ料理の特徴
アミューズで出される料理の特徴として、軽く食欲を喚起するような一口サイズであることが一般的です。主なラインナップはカナッペやキッシュ、スプーン料理など。盛り付けなど見た目にも工夫が加えられているのが特徴です。
様々なスタイル
その形は、料理長や店のスタイルに反映されます。例えば、現代の最新技術の調理機器を存分に駆使し、調理技術を試すような、超前衛的な若手シェフ達による実験的な要素を含んだもの。それとは真逆で、ラディッシュにバターを添えたシンプルなスタイル。カナッペやシュー生地にチーズを練り込んだグジェールなどの手でつまめるような、伝統的または地域性に特化したもの。
和ブームでよく見かけた、レンゲに盛り付けられたタルタルや、かつてのスペインブームの影響からか、金属製の串に刺したピンチョス系などの外国料理を取り入れたスタイル。ただ前菜を小さく盛り直したものなど、本当に様々です。最近では、食のサスティナブルをテーマにした、問題提議のようなエッセンスを取り入れるお店も見受けられます。これは海外のシェフに影響を受けた意識の高い若手シェフのトレンドでしょうか?
きっかけ作りと食欲を増す効果
アミューズは、知らない人と会話をするきっかけ作りには、欠かせないアイテムです。様々な職業の人が出会うパーティーや久しぶりに合う友人などと、つまみながらの会話は楽しみの一つです。そして、泡系の食前酒と共にさらに食欲も増進します。
タイミングを作るための必須アイテム
作る側のメリットは、次に続く料理の準備をする時間の余裕が生まれることです。アミューズも無しにいきなり料理スタートでは、特に前菜が追い付くことができません。アミューズは、ゲストが到着したらすぐに提供できるのが鉄則です。
ゲストがアミューズを楽しんでいる間、キッチンではその後の料理提供の為の準備やタイミングを計っています。特に複雑な盛り付けや、火入れにこだわりのあるレストランでは必須。アミューズを準備する手間は少しかかりますが、トータルで考えるとメリットが多いのではないでしょうか?
提供の仕方にセンスが問われる
食材は基本的に何でもいいですが、大切なのはその後の食材と被らないこと。極端な例だと、アミューズでスモークサーモンを出したのに、魚料理でもサーモンのソテーでは良いメニューとは言えません。サーモンを使ったコース料理なら別ですが…あまり手をかけ過ぎず、簡単に手早くできるのもポイントです。やはり、食材にこだわり手間をかけるのは、メインディッシュになるのが良いでしょう。あくまでアミューズなのでやり過ぎはよくありません。が、提供の仕方にはセンスが必要なので、やはり手を抜くことができません。難しいですね。